華麗なる排便




前に食玩のことを書いたのでなんだかコレクターとか思われないか心配なのだけど、


いわゆるガチャポンってやつをたまにするのですよ。


まぁ、本当に興味をそそられた時くらいのものなのですが…


小学生くらいの時はガンダムとか好きでたまにしていたのですが


さすがにこの歳になるとなかなか踏み出せない。


あの少年時代の心はもう戻ってこないのね、と、ちょっとだけセンチメンタルになったりするわけですが、


ある日出会ってしまったのですよ。


少年時代の心を呼び起こす一品に…










華麗なる便器のガチャポン、これこそ管理の心を揺さぶる一品であった。


こ、これはガチャっと回してポンっと出したい!


うんこみたくポンって出したい!


と思い、欲望のままに財布を開くとそこには








現金約20円しかなかった。








そう、貧乏管理には華麗なる便器など手の届かない存在、普通の便器でうんこしてろ、そう言わんばかりの現実が待っていたのです。


しかし諦められない。


よし、給料入ったら、給料入ったら即座にガチャっとポンしよう。


華麗なる便器をコレクションしよう。


そう心に決めてその場を去りました。


必ず…また迎えにくるから…。





それから、悠久とも言える長い時を経てついに給料日を迎えました。


今日の僕はセレブリティ。


もう華麗なる便器を集めても恥ずかしくない。


と、集める行為自体が恥ずかしい気もするけど、そんなの気にしない。


さぁ、いざゆかん、華麗なる便器の元へ!








と思ったら、入れ替わってなくなっていました。








なんか、かき氷のミニチュアみたいなのになってた。


お呼びじゃないんだよ、便器出せ。


そう罵っても便器は帰ってこない。


ごめんよ、間に合わなかった…


あいつは行ってしまった。


一度撤去されたガチャポンに遭遇できる可能性は低い。


完全に諦めるしかなかった。








それから、一月が経った。


忘れられはしなかったが、いつまでも引きずってたって皆に心配かけるだけだ。


そう自分に言い聞かせて無理矢理立ち直ろうとしていた。


さぁ、今日は昔のバイト仲間と海に行く日だ。


気晴らしに楽しまなきゃ。


気丈にも明るく振る舞う健気な管理であった。


しかし管理はこの旅で意外な再開を果たすことになる。





それは途中、立ち寄ったスーパーであった。


申し訳程度に備えつけられているガチャポンコーナー、いるはずがないと思いつつもつい目がいってしまう。


その時、管理は我が目を疑った。





あいつが、あいつがここにいるなんて!





もう会えないと思っていた。


諦めていたのに、まさかまた会えるなんて!


早速、早速ガチャっとポンしなきゃ!


と、財布を開くとそこには皮肉なことに500円玉とお札しかなかった。


また会えたのに、こんな悲劇が待ち受けていたなんて…


管理が絶望したその瞬間だった。





「これで、やってください」





そう言って、後輩のG氏が2枚の100円硬貨を手渡してくれたのです。


こ、この男はなんて優しい男なんだ。


感動して一晩中泣いた。


G氏の暖かさに触れ、意を決してガチャっとポンする。


丸いケースの中には金色の和式便所があった…。


ありがとうG氏、ありがとう応援してくれたみんな。


中を開けてみるのは後でじっくりにしよう…。


そんなこんなで、鹿のいる海を堪能した挙句、夜はG氏の家に泊まったのですが、


次の日の朝、急な便意に襲われたのですよ。


あまり人の家でうんこするのは望ましくないけど、割と我慢できないレベルまできていて、


「これはさりげなくトイレにいってうんこするしかない」


とか思わざるを得ない展開だったのです。


「ちょっとトイレ」


とか言って排便に望むわけですが、ここ最近ずっとお腹が緩いせいか柔らかいのが止まらない。


なかなか水状に近いものがでました。


それもなんとか落ち着いたので、うんこを流して終了しました。


ただ、レバー回す方向がイマイチわからなかったけど気にしない。


それからしばらく、ゴロゴロしてゲームしたり、マンガ読んだりしていたのですが、


G氏がスッと立ってトイレに行きました。


その時、管理は「あ、そういや華麗なる便器のガチャポン、まだ開けてなかったな」


とか思って開けてみていたのですよ。


ちなみに噂の金色和式便器がこれ。











いやはや、ケースの外からじゃ気付かなかったけど、うんこまで置いてある粋な演出。


この流れていないうんこ、素晴らしいクオリティですな。


これはさっそくG氏に見せびらかせねば、と、トイレに行ったばかりのG氏を呼ぼうとしたら





入ったばかりなのに水を流す音が…





こ、これはまさか…








うんこが流れてなかったんじゃ…





思えば、レバーの方向がイマイチ曖昧だったのにちょっと流れたのを確認しただけでトイレから戻った管理なのだけど、


もしレバーの方向が「小」とか書いてある方向だったとしたら…


いくら水に限りなく近いうんこだとしても、小では流れないと思われ…。


つまりG氏は管理のうんこを流させられる悪夢を見せられたのではないか、と思うのでした。


何も言わないG氏の優しさに心が痛みつつ、


「みて、この華麗なる便器を。うんこが流れず残っているよ」


と言おうと思っていた台詞をそっと胸の奥にしまいこむのであった。


そしてG氏、これ読んでもこのことに触れないであげてください…。





恋に初めて勇気を出した日の記録




管理が塾の先生になって、初めての夏期講習といった日々が始まりました。


塾の先生にとって、夏期講習というのはなかなか大変なものらしく、


同業の知人友人、あと痴人なんかにも色々と大変な話を聞かされていました。


授業数が増え、準備が圧倒的に大変になる話。


休みが減る話。


生徒に手を出して辞めさせられた人の話。


などなど、色々話を聞きます。


そう、同じ立場になって初めて知る、先生の大変さ。


今まさに受け持っている生徒達くらいの年頃には、授業中は騒ぐわ先生舐めてるわでクソガキだったなぁ自分。


当時の先生ごめんなさい、って感じです。


さて、そんなクソガキだった中学時代、管理は塾で恋をしました。


まぁここではKさんとでも呼びましょうかね。


基本的に女の子に自分から話しかけるとかそういったことはなかった当時、


ひょんなキッカケで管理はそのKさんと交流を持つことになります。


ある日の授業中にですね、首筋になにか地味な痛さを感じるのですよ。


一瞬、電気が走ったみたいにピリッ、ってするのです。


これはおかしい、おかしいこれは、と思うのですが後ろを振り向いても全然知らない人がいるだけ。


背後からの攻撃かと思っていたのだけど、赤の他人が攻撃をするわけはないし、そもそも初めて感じる痛みでした。


この痛みが快感に変わっていく、とかいったマゾヒスト管理さんなら全然問題ないのですが、


管理さんはソフトなM、痛みで喜ぶようなドMではないですので、もしも攻撃なら防がねばなりません。


ちなみにソフトなMだからあまり攻撃しないでね、ドSなたけし君。


と、さりげなく大親友を貶めつつ、これも貶め愛よ、とSな一面を出す管理さん(写真右)。


さて、ちょっと脱線しましたが、とにかく攻撃を防がねばなりません。(2回目)


全神経を背後の方に集中させます。


ちなみに授業への集中と反比例するのは仕方ありません。


赤の他人が攻撃するとは思えない、しかし背後以外からの攻撃は考えられない。


人を疑うことは恥ずかしいこと、そう信じていた管理もあえて恥ずかしいことに身を投じます。


そして背後から首筋へ何かが近づく気配、管理は咄嗟に振り向いた!


するとそこには、








シャーペンを構えた赤の他人の姿が!








これが後のKさんなんですが、シャーペンの芯を飛ばす必殺技を赤の他人である管理に使ってきていたみたいですね。


この後、このシャーペンの芯飛ばしを覚えた管理は別の気になる子を泣かす事件があったとか後々あったのですが、それは割愛。


何故に管理に攻撃してきたのかは全然不明、授業中に先生にちょっかい出してたのが目立ったのか、


単に管理がいじめやすそうだったからかは分かりませんが、


そこからKさんと管理は度々話すようになっていきます。


年頃の子が異性に話しかけるってのは、勇気がいることでして、気のないそぶりをしながらも


何かキッカケを作ってはその子に話しかけようと一生懸命になっていました。


そう、間違いなくあの日、あの時、あの子に恋をしていたのです。


授業の合間の休み時間、授業が終わってから親が迎えにくるまでのわずかな時間、


Kさんとの交流の時間が生きがいでした。


同じ学校のT、去年の今くらいの時期の日記で「なんで男ってこうなんだろう」の名言を生み出したので有名なTが


至福のひとときを邪魔するたびに心の中で


「邪魔すんじゃねぇ」


と思っていたくらい青春していた日々もいつかは終わりがきます。


それはやっと、少しだけ自然に話せるようになった頃のことでした。


今日も会えたらいいな、とか思いながら塾に行く幼き日の管理。


しかし、その淡い期待は予期せぬ憂いへと変わっていきます。


Kさんの友人にIちゃんと言う子がいました。


よく3人、もしくは邪魔者のTと4人で世間話をしたりしていて、Iちゃんとも仲良くなっていたのですが、


Iちゃんが、管理を呼んで言うのです。


「K、もう少しで引っ越すんだって」


透明の水に墨汁を垂らすように、心の中が黒く侵食されていきました。


嘘であって欲しい、そう思う一心でKさんに確認を取りました。


肩を叩いて振り向いたら人差し指がほっぺたに当たる技なんかをKさんにして必死に動揺を隠しながら話しかけるのですが、


幼き管理、本当は全然隠せていなかったに違いありません。


ほっぺた触れてラッキーなんて変態思想も、もちろんありません。


「再来週に引っ越すよ。授業に出るのは次で最後だよ。」


と、現実をKさん本人から突きつけられました。


「ホントに?」


と、聞きなおしても現実は変わりませんでした。


引っ越す先は、今では日帰りでも行ける距離ですが、中学生の自分ではとても会いに行けない距離です。


このままじゃ、あの子がいなくなることに対して何もせずに終わってしまう。


当時、中学2年生。それまで恋に行動を起こしたことなんか一度もなかった。


恋をすることは恥ずかしい、人を好きになるのは恥ずかしい。


そう思っていた日々。


だけど、ここで何もしなかったらきっと後悔する。


当時は携帯なんて便利なものは普及していない。


このままでは完全にお別れになってしまう。


それだけはイヤだ!


そう思い、考えました。幼い管理が初めて恋に積極的になりました。





そうして迎えた、あの子と会える最後の授業の日。





たしか、雨の日だったと思います。


休み時間も何事もなく、何事も起こせず過ぎてしまい、その日の授業も終わり、とうとう帰る時間になりました。


もう時間は残されていない、ここで言わないと一生後悔する。


その想いから、恋の行動に踏み出せなかった自分が生まれて初めて勇気を出して言いました。








「あの、最後だから、写真撮らせて…」








もし、嫌がられたらどうしよう。





仲が良くなったと思っていたのは自分だけで、相手はただの好奇の対象程度にしか自分を見ていなかったら断られるかな。





と、破裂しそうな心臓で息苦しくなりながら不安に思っていました。





凄く長く感じた返事待ちの数秒、Kさんの返事は








「うん、いいよ」








と、可愛い笑顔で言ってくれました。


思わず安心して泣きそうになったけど、きっと泣くのは恥ずかしいから、涙をグッとこらえました。


そして、Iちゃんと3人で写ったのと、IちゃんとKさん2人で写ったものを撮りました。


本当は2人で撮りたい、だけどそこまで言う勇気が出ない。


3人だけど一緒に撮れたし、これでも満足だよ。


そう思っていた時、Iちゃんが言いました。





「Kと一緒に撮ってあげよっか?」





いたずらっぽく笑いながら言うIちゃんは、ひょっとしたらこの気持ちに気付いていたのかもしれません。


「あ、うん。」


と、素直にお礼の言えない返事をして、一緒に撮ってもらうことになりました。


Kさんはイヤじゃないかな?とまたしても不安になりながら、Iちゃんにカメラを頼みました。


けれど、撮影する時、Kさんが屈託ない笑顔でくっついてきてくれたのです。


なんかこう、今の管理みたいに不純な気持ちとかそーゆー感情は全然なくて、


ただ、嫌われていなかったことそのものが凄く嬉しかった。


手を繋ぐことすらしたことなかったけど、きっと凄く幸せだった。


それから、撮った写真を送るってことで住所を教えて貰い、手紙を書きました。


Kさんからも返事はきて、3年ほど手紙を交換していました。


日常の話や引越し先での友だちのこと、管理に好きな人ができたこと、手紙でたくさんのことを語りました。


高校に入ってからある日の手紙で、Kさんから一つの報告を受けました。


「彼氏ができました。」


って。


管理も報告をしました。


「あの時あなたが好きでした。」


って。


それから間もなくして、お互い忙しい日々が続き、いつしか連絡も取れなくなりました。


きっとこれが、時が流れるってことなんだろうなぁ、と思います。


連絡が取れなくなった頃から1年くらいして、管理は高校を卒業し専門学校へ通うことになりました。


一人暮らしをする家は、かつてKさんが引っ越した町でした。


あの子がたまに送ってきた写真に写ったパン屋。


話題にでた焼肉屋。


初めて住む町が妙に懐かしく感じました。


連絡を取っていた3年間の間、Kさんはこの町も引っ越したみたいです。


あの子はここにはいない、けれどあの子のいた町を知りたいと思いました。


まだ学校が始まる前で暇はたくさんあったので、町の探索はいい暇つぶしでした。


引っ越してから1週間くらいした時でしょうか。


町にもちょっと慣れてきて、ちょっと遠出してアパートに戻ろうとした時、


女の子が5人くらいアパートの前を歩いていました。


その中の1人に、Kさんがいました。


正確には、Kさんだったような気がする、と言うだけでただの他人だったかもしれません。


ただ、Kさんはきっと元気でやってるんだなぁ、と思うには勘違いでも十分でした。


こうして、管理の若かりし頃の小さな恋は幕を閉じたのですが、初めて恋に勇気を出した日のことは忘れません。


顔も悪いしセンスもない管理ですが、きっとあの日があったから


その後にちょっとはまともに恋ができているんだろうなぁ、と思う次第です。


Kさんの存在に今更ながら感謝しつつ、とりあえず今を大事にしようと思いました。


Kさんもお幸せに…。
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