壊れた車


いやはや、まいったまいった。

管理ってやつはこれがまたよく車を壊すのですよ。

今の車は三台目なのだけど前の二台もよく壊れたもので酷い目に遭いました。

別にぶつけたりしたわけじゃないんですけどね。

やっぱ整備くらいできないと駄目ですね。

こんなときは整備のプロだった父上の存在がありがたく感じるものです。

しかしこう、パソコンといいその他電化製品といい、ホントに機械と相性が悪い。

2台目の車とか、クリスマスに彼女とのデート中とかにとまりましたからね。

すげー煙でて止まったときは焦った。こーゆーのでは不機嫌にならない彼女でよかった。

で、今回。三台目のそれも止まりおったわ。

出勤中に。

もうね、すげー焦った。峠の途中で異音が鳴り出して明らかにおかしな状態。

しかし、仕事に穴を空けるわけにはいかないと、

「なんとかもってくれ」

と祈りつつ峠を攻める管理。

が、残念。

坂を上っている途中でアクセルを踏んでも力が抜けていき、ついには止まってしまった。

端に寄せようと頭を半分だけ路肩につっこみかけたところでプスン、ですよ。

これじゃ世間の人に迷惑がかかってしまう。

なんせ退勤ラッシュの夕方5時。

後ろからどんどん車がきます。

なんとか自力で車を押して路肩に入れ込まねば。

しかし心配な点もあった。

ここは峠の上り坂。押し込むことができるのだろうか。

・・・いや、男は度胸。なんでもやってみるものさって阿部さんも言ってたしやるしかない。

そう思いつつサイドブレーキを落とし、ニュートラルにレバーを入れる。

と、坂をバックで下り始めるマイカー。

急いで車の後ろに走り車を押す。



が・・・



お、重い・・・

当たり前だけど単位がトンの鉄の塊。

こちらの押しになどびくともせず車は下がってくる。

まずい、このままじゃ逆効果だ・・・

負けるんじゃねぇぞ俺!

燃やせ!小宇宙を!!

と、気合を入れ腰に力を入れなおすとなんとか降下を止めることは成功した。



・・・



で、ここからどうするの?



止めただけ。押し上げるまでは至らない。

今より力があった若い頃ならともかく、このたるみきった体ではこれが限界である。

当然、この常に全力状態も続くわけではない。



くっ・・・ジリ貧か・・・



どうしようもない、いずれ体力が尽きるだけ・・・

ならば!



ダッ・・・!

支えをやめ、運転席に走る管理。

思った以上に速く峠を下り始める車。

運転席のドアを開け、乗り込もうとするが、動いている車に乗り込むのは難しい。

右足の靴は脱げ、それでもかまわず運転席に乗り込みサイドブレーキを上げる。

ガッ・・・!

ぬるぽと言われずとも思いっきりサイドブレーキを引き上げ一息。

さて・・・どうするか。

この車が止まった感覚、前にも経験ある。

彼女とのデート中に車が止まったときのそれと同じだ。

ラジエーターかな?

あの時は確か、少し休めたら動いたはず・・・

緊張しつつもこのままではどうしようもないのでキーをひねる。

と、エンジンがかかった!

よし、邪魔にならないところにちょいと移動だ!

で、そこから携帯で近場のタクシーを検索。

車は放置で職場に向かってもらった。

そこから職場につくまで、実に2100円のタクシー代・・・高い・・・。

たまたま、本当にたまたま手持ちがあってよかった。

昼に前の家の最後の家賃を払おうとした時、おばさんが

「もうもらってるからいいのよ」

って、どうやらあたい次の月のを早々払う形で払っていたみたくその家賃がそのまま手元にあったから助かった。

あぁ、マジ助かった。おばちゃんありがとう。なーんて思いつつ、職場についてみると





車に塾の鍵忘れた・・・





ま、マジかよ・・・

お金もさながら、今から往復していたら授業開始ギリギリじゃねーか・・・

が、ないものは仕方ない。

帰ろうとしたタクシーの運ちゃんを引きとめ、再び往復してもらうことに。

なんか、タクシーの運ちゃんがすげー謝ってきた。

「いつもなら忘れ物はないか声をかけさせていただいているんだけど今日に限って・・・」

っていってた。

いやいや、悪いのはあたい!運ちゃんちっとも悪くないんだけど!

しかし哀れんでくれたのか、帰りの往復は3500円ですんだ。

行きで2000円超えてたから往復なら4000を超えるはずなのにね。

良い運ちゃんだった、しかし合計5000円を超える出費・・・手痛い・・・

なんとか授業時間には間に合ったけど、いつもちょっと早くくるK君は外で待ってた。ごめんね。

そうして無事授業が終わり、帰る段階に・・・

こんな時、頼りになる父上を迎えによび、現場にいくことに。

父上いわく「やっぱりお前だったか。」

どうやら、あの苦しんでいるときに通りかかったらしい。

み、見てたなら助けてよ!

と思ったけどまぁホント助かります。

そうして、父上の助けを得て車をごまかしごまかし帰ることに。

帰りの車の中で父がつぶやいた。

「やはりこの峠か・・・」



え?



つづく。